東芝キヤリア社会・環境報告書 2012年
17/36

施設は、なるべくヒートポンプに切り替えるとメリットは大きいという思いはありました。商品企画としても、いつかはたどり着いていたと思いますが、片山さんは先見の明があったと思います。松尾) 40~50%削減の可能性があるという見積もりです。まず、重油をお湯にする時点で85%。その際の熱損失は測定できていませんが、配管損失は15~30%。うまくいっても重油のもっていた6割程度のエネルギーしか温室の中に置いてきていません。ですから、ヒートポンプにしなくても近くに置くだけで3割は削減できるはずですが、そこでさらに熱源転換をして夜間に電気で賄えるとなると、この時点でさらに4割、うまくコントロールすれば5割の削減が可能になります。片山) いちご栽培のときは、年間約57%削減できたという実績があります。山口) お客さまのニーズをうかがっていても、ランニングコストを優先する方、イニシャルコストを優先する方の両方がいらっしゃいます。導入を検討する上では、コストバランスが重要になりますね。もちろん、CAONS導入の場合の数字を提示して理解を促します。またCAONSは、CO2削減には優れた製品ですので、環境について積極的なお客さまには推奨できます。中西) 私の場合はヨーロッパがメインですが、日本とよく似ています。何といっても省エネ志向です。ノルウェーなどの北欧では半数近くが高気密住宅なので、高効率需要が高まり、自然エネルギーを用いた機器の需要も上昇中です。その点、ヒートポンプはCO2削減、省エネが実現できるもの。東芝キヤリアはヒートポンプ・ソリューションカンパニーとして、今後は消費者の方が無意識に環境や省エネに貢献できるシステムや、省エネなどの意識を喚起できる商品をつくっていきたいと思います。片山) 中西さんの話と関連しますが、CAONSは性能面でも価格面でも日々進化しています。加熱能力が大きいものも登場しています。また、こちらのメロン農園でも、冷水を利用した次のステップを模索中です。湿度の高い夏場に冷水で除湿ができて室温も下げることができ、夏場におけるメロンの最適な育成につながるものです。我々がヒートポンプ・ソリューションカンパニーを実践する以上、技術を駆使して貢献する覚悟があります。大橋) まず、高い品質であることはいうまでもありません。私の立場としては次につくりやすいメロン、消費者に届けやすいメロン栽培の技術を発掘することですね。冬場は省エネ、夏は冷水を使って、メロンが育ちやすい環境づくりを研究中です。栽培に一番欲しいのは太陽光ですが、これは自分でコントロールできないので、温度、水、湿度の管理を技術的にコントロールすることですね。松尾) 電気を消費する側は、欲しいだけ使える。供給する側は原子力さえあればつくり出せると考えていたと思います。しかし、ウラン価格の高騰や福島に端を発した原発再稼働問題で、電力の「自律分散」、エネルギーネットワークの適正化が急務の状況になっています。そんなとき、高いポテンシャルをもつ日本企業が送り出す商品が売れないのはなぜかと考えれば、ここでも「バランス」が頭をよぎります。性能を維持しつつ、いかにユーザーの希望する価格で提供できるか。環境面の技術基盤がしっかりしている日本メーカーだからこそ身に付けた提案力が発揮されるべきだと思います。中西) 次のステップは確かにそうかもしれません。そのために新しい技術を生み出すのも大切ですね。さらに、今ある技術を違った発想での横展開も検討するべきだと思います。片山) 私は、今の製品でもまだまだやれることはあると思っています。ちょっとした改良が施されることで、お客さまの新たなニーズにヒットし、販売につながるものがあると思います。また、環境に良い製品はもちろんですが、これ以上環境を壊さない製品という発想も大切なのではないでしょうか。山口) メーカー側からすれば、確かにいろいろな用途は存在していると思います。また、それぞれのケースで省エネ、CO2削減、エコロジー&エコノミーを意識していることでしょう。一方、製品の高品質化を追求するあまり、価格が比例して高くなってしまうことも否定できません。品質と価格のバランスこそ、取り組むべきテーマなのかもしれません。域はさらに拡大。節電による金額面で期待できるメリットについてお聞きします。環境への取り組みでは、海外向けの商品企画を行っていて学ぶことはありますか。座談会の大きなテーマは「より良い製品をつくるために」です。ヒートポンプ技術を利用した心強い試みが展開されていますが、よりおいしいメロンをつくるという意味ではいかがでしょう。皆さんにこれからの環境問題について見解をお聞かせ願いたいのですが。特に、生活者として意識すべきことなどという視点でお願いします。左から、片山、中西、松尾、大橋、山口(敬称略) 立場はそれぞれ違うものの、今後のビジネスのヒントになるような話題も登場しました。メロン農園へのCAONS導入がきっかけとなり、今後ますますさまざまな産業分野への適応が実証されることでしょう。特定のユーザーだけにとどまらず、柔軟な発想で省エネをはじめとした環境調和型製品の価値をバランス良く選択し、提供していくことがメーカーに求められています。座談会のまとめ16東芝キヤリアグループ 社会・環境報告書 2012らのメロン農園でも、冷水を利用した次のステップを模索中です。湿度のら来年はと思う意識を今年から すぐに始める環境改善(関係会社/小林 富士夫) 

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る