社会・環境報告書 2019年
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ヘリウム充填によるガスリーク検査機ガスリークを改善した治具製品移動用AGVR448Aに対応した「屋外設置形DCインバーター冷凍機」我科)杠さんがおっしゃった冷媒管理に関連してですが、先ほど申し上げたPEST分析の「P(政治)」の部分では、国内HFC(ハイドロフルオロカーボン)削減への取り組みとして、パッケージエアコンやVRFなどの製品を規制し、低GWP化を加速させる動きがあります。杉崎)CTCでも低GWP冷媒をどのように使いこなすかを検討している部門もありますね。工藤)事業所内の冷媒管理体制をご覧いただいてお分かりかと思いますが、冷凍サイクル内を真空状態にしてフードの中にヘリウムガスを充填させるなど、富士事業所は徹底したリーク検知を行っています。室外機の完成品を保管している倉庫では専門部隊が感知器でチェックし、仮にそこで感知されると、ヘリウムテストをクリアしたものであっても梱包を解いて再チェックします。せっかく温暖化係数の小さい冷媒を使っても、漏れがあってはたいへんですからね。杉崎)2重3重のチェック体制を見学し、あそこまで手間をかけて徹底していることに感銘を受けました。また、製品からの漏れだけでなく、接続治具についても継ぎ目をなくす溶接を施すなど、品質と信頼性の確保に余念がないですね。我科)いち早くF-gas規制※を取り入れた欧州は、冷媒に関する捉え方が非常に厳しいですね。日本でもそうした規制やフロン排出抑制法などにより、冷媒の漏えい規制が強化されています。安全性の確保、オゾン層の保護、地球温暖化抑制というように機器に使用する冷媒も時代とともに変遷してきました。現在は、R410AからR32への冷媒転換が盛んに行われているところですが、私たちはその時々で出てくる課題と向き合い、より良い解決方法を実行していかなければなりません。工藤)昨年くらいからR410AよりR32の機種が増えてきたせいか、製造工程では、以前に比べ保管しているR32の消費が早くなっています。この先、R32に代わる冷媒が主流になっていけば、そうした状況にも変化が出てくるのですね。杠)コンビニ業界でも低GWP冷媒への切り替えが進んでおり、2025年までにGWP値1,500以下を目標に機器の開発を進めています。当社は、2016年に業界で初めてGWP値1,387のR448Aに対応した「屋外設置形DCインバーター冷凍機」を市場投入し、これが高い評価を受けました。GWPの目標値は、今後ますます下がっていくと思いますので、機器の開発も加速して行っています。杉崎)労働力不足を補うための対応も重要なテーマであると冒頭で我科さんがおっしゃいましたが、事業所内を往来しているAGV(無人搬送車)はまさにその救世主のように見えました。コンベアを駆動させていたときに比べ、AGVの充電消費電力の方が大幅に低くなったそうですが、省力化と省エネの両方を実現したことになりますね。工藤)製造ラインが移設したときに、コンベアをやめて作業の負担を減らすために大小さまざまなAGVを導入しました。AGVは非接触充電なので、ここでも人の手が不要です。省人・省力化に貢献するものであると同時に、コンベアからの置き換えで64%も消費電力を削減できたので、まさに省エネの救世主です。杉崎)工藤さんは製造工程での省エネに取り組んだのですね。私はさまざまな空間の省エネを技術的な視点で追求しています。例えば、今取り組んでいることの1つに「頭寒足熱空調の提案」があります。あるオフィスのフィールドテストでは、足元の温度が下がると体感温度も下がることが分かりました。足元を暖める制御でエアコンの設定温度を調整すれば、省エネにも貢献できるのではないか、というのがこの研究の狙いです。例えば、どのように機器を配置、制御すれば良いかなど、データの解析結果から得られた内容を機器の開発に生かす、まさに、東芝グループ全体の方向性として示されている「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」の一環でもあります。※京都議定書中のHFC(ハイドロフルオロカーボン)、PFC(パーフルオロカーボン)、 SF6(六フッ化硫黄)をF-gasと呼んでおり、これらの使用量の規制が欧州中心に かけられている。設立20周年を迎えた今、仕事に関する展望などをお聞かせください。設立20周年を迎えた今、仕事に関する展望などをお聞かせください。温暖化係数の小さい冷媒の使用や機器の開発、また冷媒漏れのチェック体制などについてお聞かせください。特集211東芝キヤリアグループ 社会・環境報告書 2019

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