換気・送風機 設計・工事専門家用 2020年4月
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516基 礎 編3. 気圧について 近年、住宅の密閉度が高まっており、レンジフードファンや大形ダクト用換気扇を使用した場合、給気が適切でないと室内が100~200Pa負圧になるケースがあり、マンション入口のドアを開きにくくすることがあります。仮に150Pa負圧になったとした場合、ドアの大きさが1m×2mの大きさとすると、そのドアには300Nの力が開扉を妨げる方向に働くことになり、子供の力ではドアが開かない場合もあります。適切な給気計画は、換気設計に欠かすことのできない重要事項の一つです。3.換気設計1必要換気量の求め方必要換気量の求め方は、部屋の種類、火を使用する場合などにより異なりますが、大きく分けて建築基準法に定められる方法と、部屋の必要換気回数から求める方法などがあります。建築基準法に基づく方法により最低限必要な換気量を求めます。換気は建築基準法でその規制があり、換気扇だけで行う場合は次のように計算するように規定されています。●その他の基準建築基準法の一人当り20m3/hは、必ずしも十分な換気風量とは限りませんので、衛生上必要な最低限の基準と考えたほうが良いと思われます。ASHRAE(アメリカ暖房・冷凍・空調学会)では、必要換気量についてタバコの臭いなども考慮して、一人当り30m3/hをガイドラインとしています。また、建築学会では喫煙を考慮した一人当りの必要換気量として下記のような数値を使用しています。(表3-2)[一人当りの占有面積から求める方法] V:必要換気量(m3/h) Af:居室の床面積(m2) N:実況に応じた一人当りの占有面積(m2)(一人当りの占有面積が10m2を超える場合は10m2でよい)ここで、Af/Nは在室人員を表し、結局一人当り20m3/hの換気量を指定しています。従って在室人員が確定していれば、   V=20×n      n:在室人数で求めることができます。上式は建築基準法施行令第20条の2第2号に基づくもので、係数20(一人当り20m3/h)は一人当りの呼吸によるCO2の排出量が基準となっています。●一人当りの占有面積について一人当りの占有面積N(m2)は、建築物の実況に応じた値であり、一律には規定できないが、表3-1の数値を標準とします。            20×居室の床面積(Af)  必要換気量(V)= ───────────────           一人当りの占有面積(N)1)居室の場合公会堂・集会場劇場・映画館・演芸場体育館旅館・ホテル・モーテル簡易宿泊所・合宿所病院・療養所・伝染病院診療所・医院店舗・マーケット料亭・貸席百貨店飲食店・レストラン・喫茶店キャバレー・ビヤホール・バー玉突き場・卓球所・ダンスホールパチンコ店・囲碁クラブ・マージャンクラブ図書館事務所工場・作業所・管理室研究所・試験所公衆浴場特殊浴場廊下ホール同時に収容しうる人数同時に収容しうる人数同時に収容しうる人数作業人員同時に収容しうる人員0.5m2~1m20.5m2~1m20.5m2~1m210m23m24m2~5m25m23m23m22m23m22m22m22m23m25m24m2~5m25m210m23m2~5m2居室の床面積営業の用途に供する部分の床面積居室の床面積営業の用途に供する部分の床面積営業の用途に供する部分の床面積営業の用途に供する部分の床面積営業の用途に供する部分の床面積事務室の床面積脱衣場の床面積営業の用途に供する部分の床面積建 築 用 途単位当り算定人員一人当り占有面積備      考(財)日本建築設備・昇降機センター発行「建築設備設計・施工上の運用指針」より表3-1 建築用途別の一人当りの占有面積例喫 煙 程 度適 用 例非常に多い多   いか な りときどき仲介人事務所・新聞編集室・集会室カクテルバー・事務室・ホテル客室レストラン・事務室銀行営業室・事務室・商店50~8542~5120~2613~173.0~5.12.5~3.01.2~1.60.8~1.0必要換気量(m3/h・人)最小限~推奨値喫煙量(本/h・人)空気調和・衛生工学会編「空気調和衛生工学便覧」より表3-2 喫煙程度を考慮した必要換気量とそれに対応する喫煙量(推定値)1. 建築基準法に基づく方法[計算例]■広さ100m2の事務所の必要換気量を求めます。・一人当りの占有面積N (1)在室人員20人の場合 (2)在室人員不明の場合 表3-1よりN=5m2・必要換気量V (1)建築基準法に基づく場合(一人当り20m3/h) (2)喫煙などを考慮する場合(一人当り30m3/hとします)2)火気を使用する場合建築基準法施行令第20条の3第2項において理論廃ガス量によって換気風量を求めるように定められています。V :必要換気量(m3/h)K :理論排ガス量 m3/(kW・h)、m3/kgQ :発熱量(kW)、燃料消費量(kg/h)定数:次の①~③に示す。● 火を使用する台所などが主体ですが、居室でも開放形の燃焼器具を使用する場合など、条件によりこれに準ずることが望ましい。● 必要換気量の算出方法は換気方式により、次の3通りがあります。 必要換気量(V) =定数×理論廃ガス量(K)×燃料消費量(Q)① 排気フードのない場合(図3-1)②排気フードI型使用の場合(図3-2)V=40K・Q適用:一般換気扇など〈排気フードI型とは〉● レンジと同じ幅、奥行きを有するフードで、火源等を覆うことができ、廃ガスを一様に捕集できる形状のものをいう。③排気フードII型使用の場合(図3-3)適用:下記フードを設けた業務用換気扇N==5m210020V==400m3/h20×1005V==600m3/h30×1005図3ー1V=30K・QV=20K・Q適用: レンジフードファンなど図3ー2H=1m 以下10゜以上火源燃焼器具5cm以上以上H:(1m以下)図3ー3( )2H排気フードII型は図の如き寸法のフードが相当します。不燃材料空気取入口が小さい場合排気口空気取入口①空気がスムーズに流れない②燃焼器具のある場合は酸素欠乏の危険がある③空気取入口付近の人に、不快感を与える図2ー6空気取入口が大きい場合排気口空気取入口①空気がスムーズに流れる②燃焼器具の燃焼に必要な空気の導入ができれ ば酸素欠乏の危険がない。③空気取入口から入ってくる風速がゆるやかな ので、その付近の人に不快感を与えない図2ー7

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