東芝キヤリア技術史
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1-業界初のマイコン搭載エアコン(1978年)マイコンで制御する時代の到来2-世界初インバータ搭載エアコン(1980年)マイコン技術がもたらした次なる進化31(図1)世界初 業務用インバータエアコン 1971年(昭和46年)インテル社が4ビットマイクロコンピュータを開発すると、その後電卓などに採用されるようになっていた。そこで、エアコンでもマイコンを応用する開発に着手する事になった。ところが当時電装開発グループにマイコンを知っている者はおらず、入社数年目の技術者が開発チームに抜擢された。ハードウエアもプログラミングも全て自分で基礎から勉強しながら開発を進め、遂に1978年(昭和53年)に業界初となる「マイコン搭載エアコン」を発売したのである。 マイコン化により、それまでのメカ式の電気回路による制御からソフトウエアで制御する時代へと変わっていくと、できることが増えるとともに開発負荷も増えていった。マイコン搭載前の電装開発グループは製品開発部門の中にあり、比較的ほのぼのとした環境であったのだが、マイコン搭載以降、多忙を極め、それは体制が整うまで続いたのだった。【初のマイコン搭載で実現したメリット】①室温制御機能向上 室温変動幅が約3℃から1℃に改善。②再起動時のブレーカトリップ防止 待機時間を制御してトリップ回避した。③タイマ機能向上 24時間1分刻みで入・切が設定ができた  マイコン技術がもたらしたもう一つの革新がある。 前述の通り、エアコンが誕生して以来その温度制御は主に圧縮機のオン・オフで行っていたが、技術者にとっては圧縮機そのものの能力を可変できるエアコンが夢であった。学会等でモータの回転数制御にインバータを利用する基礎研究の発表はあったが、当時のインバータは高価でサイズも大きくエアコンに搭載できるようなものではなかった。そこで、技術者はインバータの小形化に取り組むのだが、その時にブレークスルーとなった技術がまさしくマイコン技術であり、マイコンと電気回路のハイブリット化が小形化のキーとなった。 そして、世界初のマイコン搭載エアコンから、わずか2年後の1980年(昭和55年)に当時同容量のインバータに対して1/6という大幅な小形・軽量化を図ったインバータを開発し、業務用エアコン(床置タイプ)に搭載し発売した。これが世界初の業務用インバータエアコン「RAV-46HTY」である(図1)。 このインバータは当時最新鋭のジャイアントトランジスタ、マイコンおよび波形合成回路を使った「正弦波近似パルス幅変調方式」を採用していた。これにより、圧縮機のオン・オフの頻度が大幅に減少し、冷凍サイクルが安定するまでの電力ロスを軽減し、圧縮機の信頼性が大きく改善する一方、低能力時は熱交換器の利用効率が向上することで省エネ性も大幅にアップした。 しかし、エアコンのインバータ化の流れを確実なものにしたのは、翌1981年(昭和56年)に発売した世界初の家庭用インバータエアコン「RAS-225PKHV」であろう(図2)。 家庭用エアコンは交流100Vのため、倍電圧整流方式を採用し圧縮機に三相200Vを供給できるようにした。また、家庭新しい技術の獲得には自分で経験することが大切であるそうして獲得した技術の上に、また次の技術が積み上がってゆく 空調・熱源機器の歴史を語る上でエレクトロニクス技術の進化は欠かせない。東芝ではマイコン技術をいち早くエアコン制御に応用したのを皮切りに、空調・熱源製品発展に繋がる新技術を産み出す先駆者となっていった。初物語

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