東芝キヤリア技術史
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(図2)世界初 家庭用インバータエアコン32用エアコンでは圧縮機が搭載される室外機にインバータを収納するため、新たに小型ジャイアントトランジスタの開発を行い、業務用に比べさらに1/3のサイズまで小形化、それにより室外機の圧縮機上部に配置することができた。この配置は現在でも続く基本構造となっている。3-家庭用インバータエアコンにおけるもう一つの革新世界初電源同期シリアル通信の開発(1981年) 家庭用インバータエアコンではエアコン制御用と圧縮機駆動用の制御器が室内機と室外機にそれぞれ収納されるため、室内外で多くの制御情報を通信する必要があった。また、室内給電方式といって、室内から室外へ電力を給電しなければならなかった。 通信線と電源線は弱電と強電の違いがあり、それぞれ専用線で接続することが一般的だが、世界で初めて家庭用インバータエアコンを発売するにあたり、据付時の誤配線によるインバータの破壊をリスクと考えた。そこで室内外間の制御情報をシリアル信号に変換し、電源と信号を一つのケーブルで供給する世界初の電源同期シリアル通信を開発したのである。これは室内外の渡り線が電源を含めて3本(電源と通信とコモン)で済み、設置工事の簡略化と、誤配線されても壊れないという画期的な設計であった。4- マイコンをエアコンに搭載して以降、ビット数は4ビットから32ビットへ、メモリも2kバイトから512kバイトへ、周辺回路だったADコンバータ、通信制御回路、モータ制御回路も内蔵されて、現在では強電系の駆動回路以外はほとんどマイコンで行えるようになっている。それとともにセンサも進化、多様化し、最初は室温センサから始まり、冷凍サイクル温度センサ、冷凍サイクル圧力センサ、電流センサ、湿度センサ、赤外線温度センサ、ガスセンサ・気圧センサ・照度センサなどが、快適性、品質・信頼性、安全性等の実現のために採用されていった。 一方、インバータ化によりエアコンにパワエレ分野の技術が応用されるようになると、インバータ駆動素子もジャイアントトランジスタからIGBT、MOSFETへ、パッケージも個別から2in1、6in1、駆動回路を内蔵したIPMへとより高効率かつコンパクトになっていった。 インバータの駆動方式もより高度なシステムに進化していき、1993年(平成5年)の圧縮機の直流(DC)化に伴い、それまでの誘導モータ駆動のVVVF方式からロータの位置検出を行い、同期駆動する業界初のDCインバータ開発に成功した。(参考:図3.制御の歴史)5- 1998年(平成10年)家庭用エアコンのR410A化に続き、その横展開として推進された「インバータ&グリーン戦略」に対応したインバータ開発も次々と進められた。(参考:図3.制御の歴史) まず、1999年から店舗・オフィス用エアコンパワーエコ、スーパーパワーエコ、スマートエコに展開されると、2003年にはビル用マルチシステムのオールインバータ化を達成した。そして2010年(平成22年)には空冷チラーのコンプレッサ駆動に世界で初めてインバータを採用した。2015年(平成27年)には、チラーの電源高調波対策及び効率向上のためのPWMコンバータを開発し業界で初めて標準搭載した。 2020年(令和2年)にはビル用マルチシステム用にデュアルステートインバータを業界で初めて開発している。大容量コンプレッサ駆動には、従来昇圧回路と大形インバータで回路を構成していたものを、本インバーターでは一つの整流回路(電源回路)と二基の小形インバータで構成し、低負荷時は一つのインバータで駆動、高負荷になると2基の小形インバータで駆動し、それを空調機の運転状況に応じて切り換え可能とした。 低負荷時は一基のインバータで運転することで、従来の駆動マイコン、インバータ搭載後のエアコン制御の更なる進化インバータ&グリーン戦略を支えるコア技術

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