東芝キヤリア技術史
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3-多連結とポンプ内蔵制御という発想 こうした難題に対し開発チームが出した解決策は、冷温水ポンプを内蔵し、それを変流量制御するというまったく新しいアイデアであった。そして2003年(平成15年)に共同研究パートナーとして選出されると、「フレックスモジュールチラー(以下、FMC)」として商品化に成功する。(図1) FMCは故障した場合でも自動でバックアップ運転に移行することも市場で高く評価された。 この斬新なアイデアはどこから来たのか。従来、モジュールユニットを連結する際に使用する冷温水ポンプは、施工会社が汎用部品を手配・取付けし、試運転においてそれらの流量調整を行うものであった。であれば、もし流量を製品側が自動調整できれば、小容量から大容量多台数連結にも対応1- チラー市場において空冷化が進んだ1980年代より、水冷チラーの需要は既存設備の更新がメインとなっていた。一般的に水冷チラーは狭い地下の機械室に設置されることが多いため、機器の搬入や入れ替え作業が困難なことが多い。そこでコンパクトな水冷チラーユニットを複数台設置し、それらを現地で連結することにより、あたかも1ユニットのごとく運転する「モジュールコンセプト」が発案され、1994年(平成6年)に「水冷モジュールチラーシリーズ」として商品化された。これがチラーにおけるモジュールコンセプトのはじまりである。2-空冷チラー大容量化のきっかけ チラー製品は多品種少量生産および商品の高度化に伴う品質コストの増大が大きな経営課題となっていた。 一方、水冷モジュールチラーで実現したモジュールコンセプト(複数台連結、連動運転)は、モジュール単位で言えばまとまった生産規模が期待でき、かつ十分な品質維持を可能とする手法であることがわかってきた。そこで2002年(平成14年)、当時の機械部品(R407C冷媒、一定速レシプロ圧縮機)を収納した空冷モジュールパッケージが、後出の空冷チラーと共用筐体として緊急開発された。 そのさなか、東京電力(株)(現 東京電力ホールディングス株式会社)殿より、吸収式冷温水機の熱源転換用ヒートポンプとして、300冷凍トンクラスのモジュールチラーの共同開発が提案される。 当初企画された空冷モジュールチラーの商品構想は通常条件で最大4台、条件により最大8台連結というものであったが、300冷凍トンクラスともなるとそれ以上の台数の連結や複数系統の連動制御が必要となり、技術的には非常に難易度の高いものであった。37■ 仕 様容 量圧縮機冷 媒ポンプ連動制御筐 体リスク分散/バックアップ設備コスト(図1) FMC [写真は8台連結]最大単体馬力40(馬力)最大連結台数12(台)最大システム馬力480(馬力)レシプロ2アンロードR407C内 蔵モジュールコントローラ(MC)箱 型モジュールによる分散モジュールコンセプトのはじまりブレークスルー技術によって新コンセプト商品を開発し新しい市場を創出した国内チラー市場での地位を築く基礎となった「モジュールコンセプト」は水冷チラーの更新対応から生まれた。それはやがて空冷モジュールチラー + ポンプ内蔵という新コンセプト商品へと進化をし新市場を創出した。ここでは4世代、約15年にわたる進化の歴史を振り返る。初物語

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