東芝キヤリア技術史
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■ 仕 様容 量圧縮機冷 媒ポンプ連動制御筐 体リスク分散/バックアップ設備コスト最大単体馬力最大連結台数最大システム馬力30(馬力)12(台)360(馬力)定速スクロール × 3台R410A内 蔵モジュールコントローラ(MC)Xフレームモジュールによる分散38できるのではないか、と考えたのである。 これは伝統的に機器の施行や運転チューニング等の現場をよく知る掛川事業所の技術者ならではの発想と言えるだろう。従来製品の枠内にとらわれた改良ではたどり着けなかったことは言うまでもないが、たとえ現場の知見があったとしても、「冷温水ポンプは施工あるいはメンテナンスの領分」という固定観念に凝り固まっていたならば同じく発想しえなかったであろう。 「大容量300冷凍トンクラス」という明確な目標が掲げられ、システム全体を熟知した技術者が「実現のためには何が必要か」を考え続けた結果、従来の枠を越えたどり着いたアイデアであった。 なお、商品化された際、東京電力(株)殿の計らいで掛川事業所において新商品説明会が開催され、大手設計事務所、ゼネコン、サブコンのキーマンに事業所を見学いただいた。そうした機会はそれまでにはなく、吸収式冷温水機の熱源転換というわかりやすい販売ターゲットもあり、営業の士気も大いに高まったのである。4- そしてFMCおよびモジュールパッケージの高性能化とコスト低減を目的として、使用冷媒を従来のR407Cからさらに高効率のR410Aへと変更する開発がスタートする。 開発は先行して上市するモジュールパッケージ屋外機から開始されたが、筐体を共用する次期空冷モジュールチラーの構造設計も考慮する必要もあった。次期空冷モジュールチラーでは、1モジュールあたり3台の圧縮機を並列に設置、運転台数により容量可変する構想であった。3台の圧縮機を並列に接続するスペースを必要とするため、従来の筐体設計のように製品下部からの吸気は難しい。そこで設計担当者を気流解析ソフトの研修(図2) Xフレームの気流解析に参加させ、連結設置しても製品の正面及び背面から必要な吸気が可能となるよう検討した結果、特徴的なX-フレーム形状が考案されたのである。(図2)5-モジュールコンセプトのさらなる進化 ① その後、モジュールパッケージの製造効率を上げるため、設計段階から主要構成部品を機能ごとにモジュール化することが検討された。具体的には、モジュールごとにサブ組み立てを行うことで製品の組み立てラインを大幅に短縮し、効率的なマーシャリング(部材の配膳)エリアを確保するとともに、所要時間を要する検査ラインを2ライン化して全数通水試験時間の短縮を可能としたのである。 一方、Xフレーム筐体を共有する次期空冷モジュールチラーの開発は、再度東京電力(株)殿との共同研究として推進され、2006年(平成18年)に「スーパーフレックスモジュールチラー(以下、SFMC)」として商品化された。そしてSFMCは省エネ大賞の経済産業大臣賞、設備デザイン賞優秀賞の金賞、東芝環境賞の優秀賞を次々に受賞し、環境調和型商品として内外から高い評価を得ることとなった。(図3) 水冷チラーで生まれたモジュールコンセプトが空冷モジュールチラーに展開されると、その副次効果として初期費用の軽減という顧客メリットが注目された。従来、産業用途の熱源機は万が一の故障時でも事業を継続する必要がある場合は、バックアップ運転用として同能力相当のシステムを用意しなければならなかった。対してモジュールコンセプトによる多連結大容量方式では、想定する故障の規模にもよるものの、最小でモジュールユニット1台分を用意するのみでバックアップ運転に対応できるため、初期投資を大幅に抑えることが可能となったのである。(図3) SFMC [写真は8台連結]X(エックス)フレームのはじまり

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