東芝キヤリア技術史
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7-モジュールコンセプトのさらなる進化 ② ~モジュールinモジュール USXの開発の中で、モジュールコンセプトはさらなる進化を遂げていた。ベースモデルのSFMC開発時に主要構成部品を機能毎にモジュール化したことは前述のとおりであるが、USXではそれをさらに進め、冷凍サイクル(熱交換器、送風機、圧縮機)毎にモジュール化していった。すなわち、製品内部に疑似的に独立した4つの冷凍サイクルユニット(モジュール)を持つに至ったのである。これにより、製品一台の中で圧縮機が故障した際にもインバータにより残りの三つのサイクルの能力調整で必要な能力を確保する事ができた。さらに製品一台全体が故障した際にも、連結されたそれ以外の製品がインバータにより能力調整することで必要な能力を確保するのである。 この言わば「モジュールinモジュール」と「オールインバータ」との組み合わせにより、機器設置の際に故障時を想定したバックアップ用のユニットを設置する必要がなくなり、「故障しても止まらないチラー」として強い訴求力を誇った。なお、USXシリーズはその後USX2シリーズ、3シリーズ、USX EDGEシリーズへと進化するが、2015年(平成27年)発売のUSX3シリーズは省エネ大賞(省エネルギーセンター会長賞)、日本冷凍空調学会技術賞を受賞。また、2017年(平成29年)に発売のUSX EDGEシリーズは省エネ大賞(資源エネルギー庁長官賞)、日本冷凍学会技術賞、環境省「地球温暖化防止活動」を受賞していった。(図5)6-東洋キヤリア工業と東芝キヤリアとのシナジー効果 米国キヤリア社と東芝の事業提携に前後して、東洋キヤリア工業と東芝キヤリアとの間では積極的な技術交流が始まっていた。2006年(平成18年)、SFMCのR410A化で性能向上を果たすと、チラーには遠心式(ターボ)冷凍機市場への進出の可能性が生まれ、さらなる大容量化や省エネ化(部分負荷特性の向上)が求められた。そこで、圧縮機運転台数コントロールによる段階的な能力可変からインバータによる精緻な能力可変方式が検討されることとなった。 また、2008年(平成20年)に東芝キヤリア空調システムズ、東芝キヤリア、東洋キヤリア工業の3社が統合されると、当時東芝キヤリアで進めていた「インバータ&グリーンコンセプト」の横展開として、チラー専用の大容量インバータ駆動回路および大容量DCツインロータリー圧縮機の開発が決まる。そして製品と圧縮機とを同期させながら開発を進め、2010年(平成22年)、「ユニバーサルスマートX(以下USX)」として商品化したのである。(図4) これは新生東芝キヤリア株式会社の製品であると同時に、1998年(平成10年)のキヤリア社と東芝の業務提携後最大のシナジー効果のひとつとなった。そして2012年(平成24年)の省エネ大賞(経済産業大臣賞)、日本冷凍空調学会技術賞、環境省「地球温暖化防止活動」のトリプル受賞を果たすこととなった。39■ 仕 様容 量圧縮機冷 媒ポンプ連動制御筐 体リスク分散/バックアップ設備コスト最大単体馬力最大連結台数最大システム馬力50(馬力)12 × 8系統(台)4,800(馬力)インバータツインロータリー × 4台R410A内 蔵MC + グループコントローラ(GC)新Xフレームモジュール in モジュール■ 仕 様容 量圧縮機冷 媒ポンプ連動制御筐 体リスク分散/バックアップ設備コスト最大単体馬力最大連結台数最大システム馬力70(馬力)16 × 8系統(台)8,960(馬力)インバータツインロータリー × 4台R410A内 蔵MC + グループコントローラ(GC)新Xフレーム + エッジフォルムモジュール in モジュール(図4) USX [写真は12台連結](図5) USX EDGE [写真は4台連結]

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