東芝キヤリア技術史
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4-ヒートポンプソリューション (2007年~) リーマンショック後、家庭用エアコンの事業移管の準備と同時に進められていったのが、「21世紀環境創造企業」をビジョンに掲げ、ヒートポンプ技術を軸とした事業の多角化である。 空調用途に加え、一定の市場規模が見込めるものとして国内のヒートポンプ給湯事業や海外の温水事業があり、2008年(平成20年)に東芝機器(株)から電気温水事業を移管・獲得して本格的に温水事業に乗り出すことになる。業務用温水給湯器を発展させ、工場等の産業用途の熱源市場の開拓を目指す循環加温ヒートポンプシステムであるCAONSシリーズの開発もこの頃にスタートした。一方で、燃焼系のガスヒーポンエアコンや電気温水器事業から撤退するなど、環境創造企業としての事業の選択がなされた時期でもあった。 この2007年(平成19年)から始まるヒートポンプ技術活用は、前章のB2Bへの軸足転換、次章のグローバル構造改革と合わせて、2010年(平成22年)に改訂された経営ビジョンへと反映され、今に至っている。振り返ると、この時期が次の10年に向けての準備を粛々と実行していた時期であることがわかる。5-歴代社長▲ Windows95発売▲ 物価下落始まる▲ 本格的なネット社会到来▲ 広域量販店の台頭▲ デフレ突入1181311611521311161111031301411341201271301221ユーロ(円)1251181061211091121101091161ドル (円)2014年 1998年 「空調設備機器分野でのグローバルな戦略的事業提携」締結「業務用空調事業における戦略的提携」締結2020年 東芝キヤリア空調欧州社設立2018年 東芝キヤリア インド社設立2015年 東芝キヤリア欧州社設立東芝キヤリア北米社設立1999年 東芝キヤリア(株)設立傘下に東洋キヤリア工業(株)連結東芝キヤリア空調システムズ(株)設立東芝キヤリアの収益の変遷池田 宏2005(H17)児子 俊郎100108109122134108137110不破 久温▲ リーマンショック▲ 超円高の時代2010年 国内家庭用エアコン事業を譲渡2008年 国内三社統合 新生「東芝キヤリア(株)」発足東芝機器(株)から電気温水事業を移管井上 章▲ 東日本大震災▲ タイ洪水近藤 弘和2013年 東芝キヤリア中国社設立2012年 コンプレッサ製造合弁会社設立2011年 東芝キヤリア タイ社マジョリティ化2020(R2)久保 徹▲ コロナ禍2000(H12)2010(H22)14611610394882015(H27)802011年 「グローバル構造改革(Global Jump)」のMOU締結809852■ キヤリアJVの歴史1995(H7)成11年)の3%から2007年(平成19年)には25%まで高まっていた。 しかしながら、2008年(平成20年)のリーマンショックを機に状況が変わってゆく。ユーロ安が徐々に進行すると、輸出型ビジネスモデルは先行き不透明感を高めていった。海外オペレーションを主管する米国キヤリア社にとっても、海外事業の成長を目指す当社にとってもこの状況は無視できるものではなく、海外事業成長戦略は見直しの時期を迎えていた。そして、当社は米国キヤリア社に対して、1998年(平成10年)の合意事項である国内と海外事業の分業体制の再構築を提案するのである。 具体的にはグローバル製造拠点であるタイ工場のマジョリティを東芝キヤリアに移し製造を強化しつつ、業務用空調機の製造を日本からタイに製造移管し大幅なコストリダクションを図るというもので、日本からの輸出型のビジネスモデルを大きく転換するものであった。議論を重ねるうち、この提案が両社に利するものであることが米国キヤリア社にも理解され、2011年(平成23年)タイ製造拠点のマジョリティ移管を伴う、グローバル構造改革のMOU(Memorandum of Understanding、覚書)を締結するに至ったのであった。 同時に圧縮機については富士通ゼネラル(株)との合弁でタイに製造会社を設立すること、中国国内市場に向けた製造拠点を中国国内に立ち上げることも合わせて決定されたのである。 ただでさえ困難を極めるビッグプロジェクトを、そのうえ3拠点同時に立ち上げることを危ぶむ声が社内外から聞かれるも、このグローバル構造改革が必要にして不可欠であるとの認識のもと、2013年(平成25年)までに全社一丸となって実現されていくのである。グローバル構造改革 (2010年~2013年) 発足当初からの海外事業は、キヤリア社の海外製品を補完するインバータエアコンを富士事業所で製造する輸出型ビジネスモデルであった。当時は2000年(平成12年)の1ユーロ100円を底に年々ユーロ高が進行するなかで、2003年(平成15年)に開発したビル用マルチシステム「スーパーモジュールマルチ」の輸出が本格化するとともに年々輸出高を増やし、製品輸出の売上規模も1999年(平

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