東芝キヤリア技術史
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4- さて活動計画もコンサルからのアドバイスもあり環境調査から技術開発企画策定までを8ステップに分け、それを何度も繰り返してブラシュアップすることで方針決定、それに研究所、大学、他社との技術交流を絡めていくこととし、1年後の最終報告に対し、3か月ごとにステアリング報告をすることで10月中旬にようやく社長から了解をもらった。 早速全員で手分けして気になるキーワードを抽出・分類して、各人が調査する項目を選定し、一次調査に入った。 調査にあたっては主としてPEST分析を行い、ありとあらゆる情報を集め、詳細調査をするもの、調査継続するもの、一旦調査を終了するものに分類し、10年先のシナリオ作成をおこなった。コンサルの世界でよく使われるロジカルシンキングの概念「MECE/漏れなく・ダブりなく全体を網羅する」を実践して、切り口の視点でもメンバーと共有を図った。同時に「TCCが目指す環境創造企業」の定義を議論していった。「環境を創造する企業とは、何なのか」は実に奥が深い言葉である。一見、非常にわかり易く胸にストンと落ちるコンセプトであるにも関わらず、いざそれを定義し、文章で表現しようとするとなかなかまとまらない。振り返って思えば、このPJ自体が環境創造を探求し、裏付けることが隠れたテーマであったわけで、最初に描いてから1年間をかけて少しずつ内容が洗練されていったのである。18環境分析調査6シーン毎の商品イメージ仮想商品企画3・キーワードアイデア発展コンセプト創出5年後のシーンVOS5- 事務所で調べられるものは全て調べ、出典を明確にして整理、必要であれば国会図書館まで文献を探しに行ったりもした。研究所・大学・他社へ人脈を駆使してコンタクトを取り、情報交換を行った。ビル空調の動向は知り合いの建築学科の教授に調査研究依頼も行った。そうした活動の中で、知識だけは膨大にインプットされ続けた。世界中のエネルギー事情から、ペット市場、野菜の育て方までも詳しくなった。日本の病院のベッド数や検査装置台数もわかってきた。果ては各国の政府は未来をどう考えどういう政策を行おうとしているかも、しっかりと分析した。 そうして1か月半も経過すると急にやることがなくなり、閉塞感に襲われるのである。研究開発部門ではないので、打合せを行っても、事業連携・共同研究開発・委託研究のステップに進むわけでもなく、次回の打ち合わせは発生しない。あっという間に過去から持っていた人脈という財産を使い果たしてしまったのだ。未来の予測も政府が予算を使って調べたことには敵わないし、公開されている文書は逆に当たり障りがないように玉虫色の内容になっていて参考にならない事に気づいたのである。ここにきVOS:Voice of Societyシーン分析キーワード抽出シナリオ想定要求機能選定技術開発テーマ詳細技術開発企画P(政治)E(経済)S(社会)T(技術)シナリオに基づくアイデア発掘を(TCC)Gr.内で実施テーマ・住宅・オフィス全10回開催・工場・病院   ・データセンタ・エネルギ ・用途拡大ほか住 宅・高気密化・パッシブハウス・VOC工 場・工場の電化・排熱問題・植物工場オフィス・クールビズ・テレワーク・サスティナブル病 院・エネルギ需要増・電子化・院内感染予防データセンタ・市場拡大・Green IT健 康・高齢化・ヘルスケア・癒し、ペット社会動向2457外部環境分析国内外規制(建築物、省エネ、温暖化)アイデア発掘都市化率、石油価格、GDP人口、少子化、ワークスタイル、インフラエネルギ、通信、医療、材料、建築物56て、自分たちでシナリオを仮説として描き、検証していくことが必要で、新たに引き出しを拡げることを貪欲に進めないといけないことをようやく理解したのであった。6- ようやく本当のスタートラインに立った状況ではあったが、12月の第1回ステアリング会議を乗り切ると、すぐに、社内関係部門を集めてアイデア発掘会を行うことを計画した。まずコンサルティング会社の人達と少数精鋭で疑似アイデア発掘会を行い、どういう風なものになるのかチェックをし、さらに発掘会で出てきたアイテムを分類していった。その結果、アイデア発掘会は何度もやるものではなく、事前準備を周到に行い、ファシリテーターをきちんとアサインして行わないといけないことが実感できた。そのためにも、事前準備として環境調査を行ってきた結果をベースに10年先の世界を予測し、5年後のシナリオを描くことが必要であった。 アイデア発掘会は、背景としてそのシナリオを説明することから始めて、住宅、オフィス、商業施設、工場、病院、データセンター、エネルギー・再生可能エネルギー、などをテーマ別に都合10回実施した。その結果をコンサルティング会社のサポートを受けながら分析を行った。まずはアイデアを発散させ、次に、アイデアからコンセプトを抽出し、アイデアレベルの仮想商品を265件企画した。続いてそれらに必要な技術を抽出し、全テーマの詳細調査に取り掛かった、特に技術動向予測から5年先の実現性の見極め、社会変化予測からの市場性(顧客魅力度)の検討がポイントである。■ 活動詳細 -環境分析~アイデア発掘10年後を予測し5年後のシナリオを仮説、アイデア発掘を実施環境分析調査から5年後のシナリオを仮説エネルギ・水素・未利用熱・エネマネ材料 3R・生分解材料・繊維強化樹脂情報通信・Bluetooth・RFID・ユビキタスライフサイエンス・ANC・生体認証・生体モニタリング冷凍・空調・自然冷媒・磁気冷凍・デシカントMEMS・睡眠センサ・CMOS赤外線 カメラ技術動向怒涛の一年が始まる早くも行き詰まり活動の立て直し

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