東芝キヤリア技術史
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8 東芝キヤリア株式会社の技術史発行に際し、東芝グループCTOの立場として僭越ながらご挨拶させていただきます。現在、東芝グループは2018年(平成30年)に発表したNextプランを着実に実行しており、基礎収益力の強化をベースに成長に軸足をシフトし、インフラサービスカンパニーとしての安定成長、さらには世界有数のCPSテクノロジー企業としての飛躍を図ろうとしています。成長を支えるCPSテクノロジーの基本構成は、東芝グループの強みとするコンポーネントやシステムからIoT技術によりCyber空間にデータを収集、AIを活用してデータを分析し、Physical空間にフィードバックすることにより、コンポーネントの動作やシステムの運用を高度化して、インフラサービスとして新たな価値を提供する、というものです。 東芝グループにおけるビルソリューション事業の中核をなす東芝キヤリア株式会社は、IEEEマイルストーン認定された世界初のインバータエアコンに代表されるように、ロータリーコンプレッサを核としたヒートポンプ技術を軸に、社会やお客様のご要求にお応えする熱応用製品ラインアップを有しています。また、これらの製品からデータを収集、遠隔 監視システムによりデータを分析し、製品の制御にフィードバックすることにより運用を高度化する取組みも既に始まっており、今後さらにCPSテクノロジーを駆使した新たな価値・サービスの創出が期待されます。 ところで、私の空調事業との関わりは、1980年代後半に東海道新幹線の初代「のぞみ」用として開発された300系新幹線向け空調装置に始まります。300系の空調装置は、新幹線で初となるインバータ制御や、軽量化のためのアルミニウム筐体化など、多くの新技術に挑戦したものでした。当時私は府中工場で鉄道車両用制御装置の構造設計を担当していた関係で、インバータ制御部を担当することになり、当時の冨士工場の空調装置本体の設計者の方々と議論・試行錯誤しながら新規開発を進めることができたことが、今となっては良い思い出です。ちなみに当時の鉄道車両は冷房化の過渡期であり、首都圏でも空調装置が搭載されていない車両がまだ多く見られた時代でしたが、その後急速に冷房化が進み、空調装置無しでは列車の運行ができないほど、必須のサービス機器になりました。さらには、客室内の温度や風量の均一化や、車両ごとの温度調整の多様化など、サービスの質的向上も格段に進んでいます。 このように、空調システムに求められる機能や価値は大きく変化してきていますし、さらに昨今はカーボンニュートラルやニューノーマルといった喫緊の社会課題への的確な対応が求められています。具体的には、カーボンニュートラルに対応する新冷媒の開発やさらなる省エネへの対応、ニューノーマルに配慮した換気や除菌などへの対応や、AIやIoT技術を活用した機器やシステムの運用・保守のリモート化・自動化推進など、各地域環境や市場ニーズに見合った安全・安心・健康へのさらなる貢献が期待されていると考えます。 これらの新たな課題や期待に対して、東芝キヤリア株式会社の有するヒートポンプ関連の豊富な技術・知見・ノウハウと、東芝グループの有する幅広いCPSテクノロジーを組合せた製品・サービスを、昨年5月に稼働開始した新技術棟「e-THIRD」から力強く発信、グローバルに展開することにより、共に東芝Nextプランを推進していきたいと考えます。 「人と、地球の、未来のために。」CPSテクノロジーを駆使した製品・サービスによる新たな価値の創出(株)東芝 執行役常務CTO 石井秀明

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